通年

釜のこと


 釜の特徴の二つを説明したいと思います。
 一つは「鳴り」。釜の中の湯の温度が上がってくると「シュー」と音が鳴り始めます。なぜ、音が鳴るかというと釜の底に「鳴り」という鉄片が漆によって取り付けられているからです。釜と鉄片にはわずかな隙間があって、この部分の水が気化して泡を出し、シューという音に変わっていくのです。この釜の底に漆でつけた鉄片が大切なので、釜に直接湯を注いではいけません。直接湯を注ぐと「鳴り」が剥がれてしまうことがあるからです。
 また、この音のことを「松風」と呼びます。音の種類は6種類に分けられます。「釜の六音」と呼ばれます。 無音・ 松風・遠浪・岸波・蚯音・魚眼の順に音がが大きくなっていきます。「松風」の「シュー」という音が釜の湯にとって一番美味しい温度とされています。「遠浪」と「岸浪」は海の波の音を釜の音にたとえたものです。「蚯音」は土の中でミミズが這う音らしく、「ゴーッ」という音がするそうです。「魚眼」は「ボッコ、ボッコ」と釜の中でお湯が沸騰する音です。
 
 二つめは「摘み」です。釜の摘みは釜の鐶付(かんつき)についで見どころとされる場所です。梔子や椎の実、瓢箪など様々な形があります。この摘みは、形だけが特徴ではなく、実用的にも大変すぐれています。
 男性の点前では、素手で釜の蓋をとります。熱くないのかな、と思われる方も多いと思いますが、昔の釜の摘みは熱くないようにつくってあるのです。摘みを触ってみると、丸い部分がクルクル回ります。軸と摘みが離れていて、熱伝導しないようにできているのです。摘みの手で持つ部分も透かしになっていて、空気が流れ、すぐに冷えるようにできています。職人の技術の素晴らしさです。

(参考文献)「茶の湯の科学入門」堀内國彦著(淡交社)

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

茶の湯の科学入門/堀内國彦【1000円以上送料無料】
価格:1650円(税込、送料無料) (2020/4/29時点)

検索

-通年,

Copyright© 茶の湯辞典 , 2024 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.