風炉の季節

風炉の濃茶はなぜ一杓水を差すのか

風炉の点前の濃茶の所作です。濃茶を茶碗に適量入れ、水指の蓋を開けて水を一杓釜に入れてから茶碗に湯を注ぎます。釜の湯の温度を下げるためにする所作でありますが、なぜそのようなことをするのか?
これは、昔の茶壷の一年に関係しています。抹茶は5月に新芽を摘んで茶壷の中に入れ封をして熟成させます。その年の11月まで熟成させて炉開きとともに新茶として開封され使われます。昔は冷蔵庫などの保存技術がない中、この茶壷の抹茶を一年使います。年をまたぎ、5月に風炉開きとなります。ということは、5月から10月まで使われている抹茶は昨年摘んだ茶葉の抹茶ということになります。1年前の抹茶で濃茶を点てるので、熱湯を注いだらすぐに香りが飛んでしまいます。そのため、風炉の点前では釜に一杓水を注いで温度を少し下げて、濃茶を練るのです。今では冷蔵庫がありますので、抹茶の鮮度が落ちる心配はありませんので、形だけの所作ということになりますでしょうか。

濃茶の点て方を説明しておきます。人それぞれの点て方で美味しい濃茶を目指すのが濃茶点前のお稽古の楽しさではあります。写真は3人分の濃茶です。

一人分、茶杓に多めの3杓の抹茶を掃きます。1回目の湯を注ぐ量は、抹茶が少し湯から見えて残るくらいです。これで濃茶を練っていきます。茶碗にこすりつけるように強く練ると苦くなります。濃茶の中に空気を含ませるような感じで練ると良いと思います。濃茶が空気を含んでふっくらしてきて、ツヤが出てきたら2回目の湯を注ぎます。人数分3口半づつになるように湯を注ぎます。

1回目の練りのふっくらツヤツヤ加減です。練っていて抹茶の良い香りが漂います。
これからの時代、各服点てが主流になるかと思います。まだまだ各服を上手に点てることは難しいですが、茶杓によってですが、3杓より3杓半~4杓くらい掃くと上手くいくような気がしています。茶道の変わらない良さと、時代によって変わる大切さ両方の気持ちを持っていたいです。

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