末広蓋置というものがあります。「大」「小」が表裏に描かれている蓋置です。「大」は大の月の時に、「小」は小の月の時に前にして飾ります。
江戸時代に流行ったのは「大小暦」です。大の月は31日ある月のことです。小の月は31日ない日の月のことです。江戸時代、月の大小の並び方、あるいは閏月を知ることは人々にとって非常に重要なことでした。月末に支払いや代金の取り立てをする商店では、支払日を間違えないように「大」と「小」の看板を作り、月に合わせて店頭に掛けていました。
暦が普及してくると、ただ大小の月を示すだけでなく、絵や文章の中に月の大小と配列を折り込み、工夫をこらして楽しむようになっていきました。干支の動物などのおめでたい図柄や人気のあった歌舞伎から題材をとるなどさまざまな大小暦が作られ、年の初めには「大小会」を開いて暦を交換したり、贈り物に配られたりしました。
明治時代に入り「太陽暦」になると「大小暦」は必要のないものとなってしまいました。茶道が流行った江戸時代に思いを馳せて「末広」の蓋置を使いたいものです。
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