茶道における美しい所作の一つが「茶筅とうじ」。「茶筅とうじ」は「茶筅湯治」という字をあてます。茶筅を温めて、やわらかくして抹茶を点てやすくするための動作です。
「回してコチンそして見て、回してコチン見て、回してコチン見て、もう一回回してコチン見ないでそのままサラサラ」祖母の優しい声を思い出します。昔は何も考えずに行っていた所作ですが、大人になって「茶筅とうし」がどうしたら綺麗にできるかを考えたお稽古に変わっていきました。そして年を重ねた今、なぜ3回音を鳴らすのかを本で知り、茶筅とうしに心が入っていきます。
茶筅とうしは真言宗の灑水(しゃすい)に由来するもので、ラン・パン・ウンという言葉からきています。
初打はラン 六根清浄の意
二度目はパン 水火不散、性徳圓満の意
三度目はウン 風光よく軽重の塵を払うの意
3回で茶筅が一周して、清浄されるという意味です。3回音を鳴らすことによって、俗世間から茶道の世界へ入っていく音ですよ、と教わった事もあります。そう思って茶筅とうしをすると、いつもの所作もまた違った心となります。
仕舞の「茶筅すすぎ」は1回少ない2回の音。俗世間に帰る時は、簡単に帰れてしまうのかな、とも思ったりしてそれもまたよいかな。
参考文献 茶器とその扱い 佐々木三味著(淡交新社)
茶筅とうしの解説をします。
〇茶筅を左回りで一回転して右側でコチンとさせます。
〇左手で茶碗を押さえます。
〇右手の親指の爪を上に向けて、茶筅を畳と垂直に上げてから手前に回して見ます。この時、指先で茶筅を回すのではなく、茶筅は持ったままで右手の親指の爪が下を向くまで手首を回して茶筅を見ます。茶筅を見る高さは、釜にかけてある柄杓の柄と同じ高さまでです。
〇コチンとして見るを3回繰り返します。
〇もう一度回してコチンとさせます。
〇最後は、茶筅を上げて見ないでサラサラと茶筅をやわらかくします。
〇「の」の字を茶筅で書いてから「八」の字の2画目の方向から茶筅を抜きます。