通年 掛軸

大津絵ー美人画と風刺画

大津絵の美人画といったら「藤娘」です。塗笠を被り、あごの下で朱色の紐を結んでいます。着物の片袖を脱ぎ裾を翻し、藤の枝を肩にかけてポーズをとる美しい一枚です。今では「藤娘」は藤の花を担いでいますが、始まりは樒(しきみ)を担いで下山する愛宕詣り(あたごまいり)の姿に由来するとも言われています。今では、歌舞伎や日舞の演目にもなっています。藤の季節の寄付に「藤娘」が掛けてあったら、一日がワクワクするような一枚です。
※樒(しきみ)=仏事に使う葉で、仏様のいる世界に咲く花に似ていると言われています。

大津絵の風刺画は鬼だけには留まりません。様々な動物たちが登場し、人間の浅はかさを説いてます。これは「猫と鼠」です。猫が鼠を酔わせて食べてしまおうとしている絵です。鼠は何の疑いもない純粋な目をしていて、猫はランランと待ち構えている目をして肴の唐辛子を箸で取り差し出しています。「聖人のおしへを聞かず 終に身を ほろほす人の しはさ成けり」と道歌が添えてあります。上手すぎる話ほど怖いものはないと説いています。

これは「釣鐘提灯」です。猿が提灯と釣鐘を天秤棒でさげている絵です。軽い提灯の方が下になり、重い釣鐘の方が上になってしまっています。「釣鐘の重きはかろく 提灯のかるきを重くなすは猿知恵・・・身を思う 思いは重く 主親(しゅおや)はかろくなしぬる人の姿か」「これは重んずべき主親(しゅおや)を軽くし 軽々べき妻子を重くする人に喩えし絵姿なり」と道歌にあります。重んずるべきものを軽んじてしまう、事の大切な軽重を間違ってとらえてしまう人を風刺しています。また、文章の中では「主親(しゅおや)」について書いていて、主人や親よりもわが身が可愛いくなってしまっている残念さを説いています。

これは「瓢箪鯰」です。猿がぬるぬるとした巨大鯰をすべすべした瓢箪で押さえつけて捕まえようとする絵です。中国伝来の画題であって、「瓢鮎図」を題材にしたものです。「道ならぬ物をほしがり山猿の 心からとや渕にしづまん」と道歌が添えてあります。上手くいくはずもなく、思慮の足りない人の行動を風刺した絵です。鯰が描かれていることから、本来の意味とは別に水難除けとしても掛けられるようです。

私の知る限りの大津絵の風刺画です。まだまだ、隠れた意味がある大津絵はいっぱいあったのではないかと思っています。いつか「大津市歴史博物館」に行って、ゆっくり大津絵を眺めたいです。

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