通年 茶碗

楽茶碗の見どころ

 楽茶碗で濃茶を練ると美味しく練れます。これは、楽茶碗の軟らかさから茶筅の当たりがよくて、お湯を吸収する力が強く、そして温かさを逃がさないためです。楽茶碗は、抹茶を点てるために造られている茶碗ですので、様々なところに心遣いがあります。一つ一つ見ていきたいと思います。

一、五峰(五山)

茶碗の口の部分が五つに波打っています。山と谷になっていて、これを五峰(五山)と言います。茶碗を手に持ち、山の部分を指で持って回して、谷の部分に口をつけて頂くようにできています。口をつける谷の部分は手が触れないようにできています。また、波打っていることにより、抹茶をすくった後の茶杓を茶碗に置きやすくしてあります。

一、口造り

口当たりをよくするために、口が少し内側に入っています。約6分内側に入っています。これは昔、日本人が蛤の殻を匙代わりにして食べていたことから、この口当たりに近い形に造っています。

一、茶巾擦れ

楽茶碗の胴部分が内側に少し凹んでいます。これは、茶巾で茶碗を清める時に茶巾が滑って茶碗を落とさないように、滑り止めの役割りをしています。

一、見込みと茶溜り

茶碗の内側の底は、平らではなく「茶溜り」という、少しくぼんだ所があります。これは、この茶溜りに抹茶を入れて湯を注ぐと湯が底に届いてから円を描いて対流するようにできています。対流することで、湯が抹茶の外側から内側に入り、均等に湯が抹茶に染み入り、ダマのない美味しく濃茶を練ることができます。また、茶碗の外側は峰(山)で表されるので、茶碗の内側は海です。茶碗を上から覗いてみて、底に向かって母なる海のように広がって見えるように造ってあります。茶碗を上から見る景色のことを「見込み」と呼びます。「見込みが広がっていて、深い茶碗」などと表現されます。

一、高台

茶碗の造りの最後に高台をつけます。高台の内側は渦になっていることが多いです。この渦を「巴(ともえ)」と言います。茶碗は、裏返して拝見することが多いので、裏返した時に姿がいい茶碗を造ります。裏返した時の茶碗は、手に持って温かみのある丸い形です。宝珠を意識して造られています。そのため、茶碗の先端は渦を巻き、先端が尖がった宝珠に見えるように造られているのです。

一、押印と引っ掛け

茶碗を正面にして、そのまま正面を向こう側(奥側)にひっくり返した左側に押印します。向こう側にひっくり返した時に、印が読めるようにします。この茶碗は「楽七」と押印してあります。そして印の右横の高台内に少し尖った部分があります。これは「引っ掛け」です。茶碗を正面にして、印を左側にして茶碗を用意します。茶碗を湯で温めた後、その湯を建水に捨てる時に、印と引っ掛けを抑えて湯を捨てます。こうすることで、茶碗が滑らないようにしてあります。

一、重さ

楽茶碗は抹茶を頂くためだけの茶碗ですので、手に持った時の重さも考えています。食器とは違い、両手で持って口につけ、顔に茶碗を傾けて頂きます。点てた抹茶が入って、両手を上げて頂いた時にほとんど重さを感じない重量に楽茶碗は考えられています。

いままで書いてきたことは、楽茶碗の基本です。写真の茶碗は、基本に忠実な茶碗です。この茶碗が良いということではなく、楽茶碗を造るということは、この基本を勉強してから更に自分の茶碗を造りあげていくのです。楽茶碗に込める意味を知ってから、自分の楽茶碗を手に持って眺めて抹茶を頂いてみると、造り手の心に触れる気持ちになります。

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