静岡県の北部にある「吐月峯柴屋寺(とげっぽうさいおくじ)」は、「駿府匠宿」の奥にあり、ひっそりと佇んでいます。
「吐月峯(とげっぽう)」といったら「はいふき」のことを言うという時代がありました。それは、このお寺から始まったことでした。
「吐月峯」は、その昔、今川氏親の丸子城内の一部であって、連歌師柴屋宗長によって和歌を詠むために建てられた庭園です。氏親が駿府城に帰った後も、徳川家康に支配されても、修復して残されていた場所です。
「春夏秋冬」すべてを楽しむことができるように、庭には春は桜が見えて、夏は枯山水の滝が作ってあり、秋は裏庭の竹林から月が昇るようにして、冬は天柱山の借景を利用して雪が見えるように作られています。
「吐月峯」は、月の名所。
寺の裏庭に竹を植えて、その間から月が昇るようにしています。「月を吐き出す竹の峯」があるので、「吐月峯」と言います。そして、昇った月が池に映るように、寺の表庭には北斗七星の形をした池がありました。
今では、訪れる人も少なくとなっているようですが、歌会が盛んだった頃に、和歌を詠み茶を点てたことが伺える分福茶釜や武田信玄から拝領した井戸茶碗なども展示されていました。