水屋にいつも置いてあって、おなじみの水次薬缶です。「腰黒薬缶」といいます。腰の部分が黒いので「腰黒薬缶」と名前がつきました。
薬缶は昔、薬を煎じて飲むための道具でした。薬を煎じるためには、薬を入れて火にかけます。直火にかけることによって、腰よりも下は煤で黒くなっていきます。この薬缶を今では模様のように塗った薬缶を「腰黒薬缶」というのです。
腰黒薬缶には、持ち手の部分に特徴があります。持ち手の真ん中より後ろ側に、丸い小さな金具がついています。これは、薬缶の蓋と小さな金具を鎖でつないでいたものの名残りです。蓋を鎖でつないでおくと、薬缶の中に煎じる薬を入れて蓋を開けたまま煮だす時に、どの薬缶の蓋かわからなくなりません。この作りを知ってから蓋をながめると、鎖を巻き付けることができそうな蓋のつくりになっています。
私たちの流儀は、注ぎ口にも蓋がついています。ついていない薬缶もありますので、間違えないようにしてください。
薬缶の持ち方・注ぎ方を説明しておきます。
〇左手は、小さな金具を小指と薬指ではさんで持ち手を持ちます。
〇右手は、5本指をそろえて口の下をおさえます。右手の小指だけが、薬缶の底に添えるとよいです。
〇畳に薬缶を置く時は、口の向きが水指の方に向くように少しだけ斜めにふって体の横に置きます。この時、膝から薬缶が出ないように置きます。
〇水指の蓋を開けてから、水次薬缶の注ぎ口の蓋を茶巾で開けます。
〇水次薬缶の注ぎ口の少し下に茶巾を添えて、水指に水を注ぎます。
〇水次薬缶を体の横に置いてから、茶巾で水次薬缶の注ぎ口の蓋を閉めます。
〇水指の蓋を閉めます。
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