梅にはたくさんの文様がありますが、梅にまつわる逸話もたくさんあります。
その中で、茶道でよく使われるのが「東風(こち)」です。
「東風吹かばにほひおこせよ梅の花 あるじなしとて春な忘れそ」菅原道真が詠んだ歌です。
「東風(こち)」とは「春に東から吹く風」のことです。
学者の身分でありながら、右大臣までのぼった道真のことを心よく思わない左大臣達によって道真は大宰府に左遷させられます。京都を離れる日、幼い頃より親しんできた梅に向かって詠んだ歌がこの歌です。すると感動した梅は一夜のうちに大宰府の道真の元に飛んできたという飛梅伝説があります。道真にとっての「東風(こち)」は、京都から大宰府に向かって吹いてくる風ということです。
「春になって東の風が吹いたならば、その梅の匂いを私のところまで届けておくれ、主人がいないからと言って春が来るのを忘れないでおくれ」
教室では及台子にオランダ三彩の皆具が出ています。勉学に由来する「及台子」に合わせて「梅見」の茶碗と「狂言袴」の茶碗を重ね茶碗にして菅原道真をイメージして一服。「東風(こち)」「飛梅」という茶杓銘はぴったりくるのではないでしょうか。
この組み合わせでのお稽古でしたら、「好文木(こうぶんぼく)」という茶杓銘もいいかもしれません。
「好文木」は、晋の武帝が学問に親しむと梅の花が開き、学問を怠ると花が開かなかったという故事から梅の別名と、なったものです。
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