染付の菱形の水指。
これは、日本人が中国に依頼して作ってもらったのが始まりと言われる水指です。大きな団扇型の中に表には2頭の馬、裏には1頭の馬が描かれていることが多いです。蓋は共蓋でできており、山水図の模様が描かれていて、つまみは竹節の形をしています。
馬の絵の水指ですから、2月の初午。5月の端午の節句でよく使われます。また、3月の門出の時にもよいかと思います。昔、旅に出る人の道中の無事を祈って、乗っている馬の鼻を行く方向へ向けたことから「馬の鼻向け」=「はなむけ」という言葉ができました。今では、「はなむけ」は品物の餞別となっています。
菱馬水指は、形が菱形なので縁起が良いため、一年中いつ使っても良い水指と思われます。ふと、なんで菱形は縁起がいいのだろうと思って調べてみました。「菱」とは水草のことを表しています。この水草が繁殖力が強いことから「子孫繁栄」を表すとされています。
そして、この「菱」には実がなるのですが、この形が菱形です。この菱の実は固くとがっていることから、「まきびし」として追手から逃げる忍者がばらまいて使っていました。鉄製の鉄びしの方が有名かもしれませんが、高価な鉄よりも軽くて固い菱の実が実際には使われていました。このことから、身を守るという意味で「魔除け」の意味を表しました。
したがって、「子孫繁栄」と「魔除け」を合わせ持つ縁起の良い図柄となったわけです。
また、この菱の実は食用にもなるようで茹でて食べることができるようです。忍者にとっては、身を守るだけでなく非常食ともなったのですね。
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