「七草」は五節句の一つであります。一月一日ではなく、一月七日「人日」が節句の一つになります。一月一日は鶏の日。二日は狗の日。三日は羊の日。四日は猪の日。六日は馬の日。七日は人の日とされています。それぞれの日には、それぞれの動物を大切にして、殺さないようにしていた風習がありました。
春の七草「せり」「なずな」「ごぎょう」「はこべら」「ほとけのざ」「すずな」「すずしろ」の春の七草の若菜を粥に入れていただきます。
冬の大地を割って芽が出てきた若菜を摘み、その生命力をいただくいて自分の無病息災を願います。
「せり(芹)」は「競り勝つ」に通じます。「なずな(薺)」は「ぺんぺん草」のこと。昔は冬の貴重な食用菜だったこと。「ごぎょう(御形)」は「ははこぐさ」のことであり、御形と書くことから「仏の体」に通じます。「はこべら(繁縷)」は「蔓延る(はびこる)」に通じます。「ほとけのざ」は「仏の座」で仏様が座る姿に通じます。「すずな(菘・鈴菜)」は蕪のことですが、「神を呼ぶ鈴」に通じます。「すずしろ(蘿蔔)」は大根のことで、「清浄や純白」を表します。
昔は、一月六日の夜に板の上で、包丁や擂粉木で28回はやしことばを唱えながらたたき、七日の朝にさらに21回たたいて粥に入れたそうです。これは、春の新年の五行の木の気を呼び込むために包丁(金の気)を叩いて傷をつけて木の気の敵である金の気を弱めているという言い伝えです。
「七草ばやし」
七草なずな 唐土の鳥と渡らぬ先にストトントン
七草なずな 手につみ入れて 亢觜斗張(こうしとちょう)
げにげにさりげなきようにて 物の大事は侍りけり
この「七草ばやし」にあわせて、包丁をトントン、トントン叩きます。
「唐土の鳥が渡らぬ先に」というのは、昔は大陸から渡ってくる鳥には疫病があり、その渡り鳥が日本に着いて作物を荒らす前にたたいて厄払いをしよう、という今年の豊作への願いが込められています。「亢觜斗張(こうしとちょう)」は、中国古代天文学による二十八宿の中の四つの星、亢、觜、斗、張を指し、これを書くことで疫病をもたらす鳥を追い払ったといわれます。